歴史遺産学科Department of Historic Heritage

畑山洸太|コロナ禍での加勢鳥開催に見る地域行事と運営体制のあり方
山形県出身
松田俊介ゼミ

目 次 序論/上山市概要/分析/考察/結論

 本研究では、加勢鳥に関わる人々を対象に聞き書き調査を行うことで、保存会や参観者らの加勢鳥に対する考えや意識、例年との差異や、今回の加勢鳥で行われた感染症対策などに焦点を当て、コロナ禍での行事開催全体に対する考えや運営体制の変容、継承問題、今後の対策について考察し解決策の提案をしていくものである。
 コロナ禍を受けた運営の議論として、「例年通りに街を練り歩く」ことや、「県内外から加勢鳥参加者を募集し、保存会は裏方に周る」といった、“①いままでどおりに行われるべきという慣習的な力学”と、「加勢鳥演者の定員減少?プラカードによる注意喚起」、「YouTubeによる演舞のライブ配信」といった、“②外的要因を取り込みながら更新していく力学”とが拮抗しあい、方策が取捨選択される構図がみられた。
 2019年末、皇冠体育官网の流行によって各地の行事やイベント等の開催が以来延期、中止となっている。しかし、そんな状況だからこそ、続ける為の熟議について注目しなければならない。
 行事の開催について保存会のメンバーに話を聞いた際に、コロナ禍以前の従来の加勢鳥の開催が望ましいとの意見が多数あった。その結果、youtubeによる演舞のライブ配信や三密回避のプラカードの作成など新たな試みを行った上で、上山城前や駅前の演舞など「今まで通り」を一部踏襲した上で加勢鳥を行うに至った。
 今後民俗行事の開催にあたって、コロナ禍の情勢をふまえ、どこまで「今まで通り」で開催するのかの選択が迫られる。その中で、どこまでの変化を許容するか――たとえば、期日変化や、運営組織のあり方など――が、今後の民俗行事の開催にあたって必要になってくるだろう。
 最後に伝統の継承に関して、加勢鳥には、行事に参加する事で民俗芸能が持つ楽しさを誰でも体験できる点が大きな要因となっている。30分から1時間程度の練習でもすぐに外部者でもすぐに踊りを習得でき、加勢鳥という来訪神としての役割を果たした際に参観者は楽しさを得ている。そうした、ある意味での成功体験を通して獲得した「楽しさ」が次の加勢鳥に参加する動機に繋がるのではないだろうか。