歴史遺産学科Department of Historic Heritage

鈴木笑葉|石錘の重量と遺跡立地からみた縄文時代の網漁
山形県出身
青野友哉ゼミ

 縄文時代の石錘は、現在まで日本全体の遺跡で多く出土しているが、出土する重量の傾向に関する詳細な分析や研究がなされていない。本研究では、山形県および秋田県域で確認された石錘の出土状況や利用方法について分析し、当時河川流域で生活していた人々の石錘を製作する際に主に選択した重量について明らかにする。加えて、石錘の重量から考えられる漁法の検討を行う。
 参考にする石錘の出土が確認された遺跡は、山形県では、小山崎遺跡、東興野B 遺跡、川内袋遺跡、岡山遺跡、蕨台遺跡、中台4遺跡、釡淵C 遺跡、かっぱ遺跡、津谷遺跡、山居遺跡、である。秋田県では、杉沢台遺跡、八森坂遺跡、館下Ⅰ遺跡、寒川Ⅰ遺跡、狐森遺跡、大畑台遺跡、菖蒲崎貝塚、ヲフキ遺跡、龍門茶畑遺跡、根下戸道下遺跡、漆下遺跡、上ノ山Ⅱ遺跡、八木遺跡である。それぞれの遺跡を山間部、上流域、中流域、下流域、汽水域、河川を含む沿岸部、海岸部(沖)と分類した。
 各分類の石錘重量について出土傾向を見てみる。(図1)山間部の遺跡出土石錘は40~300g、上流域では10~50g、中流域では90g~300g、下流域では400g~700g、汽水域では200g~400g、海岸部の沖では600g~800g の石錘が集中して出土することが確認された。重量の変化の要因は流速および水深だと考えられる。流速が早いほど、もしくは水深が深いほど石錘の重量は比例して増加する傾向があると考えられる。
 次に各流域の石錘の重量から漁法を考える。(図2)石錘は130g 未満を小型石錘、130g 以上を中型、大型石錘と分けている。小型石錘はかぶせ網系の漁法に用いられたと考えられ、中型、大型石錘は建網系の漁法に用いられたと考えられる。以上のことから分類すると、上流域はかぶせ網を行い、下流域、海岸部では建網系の漁法を行った。また、山間部、中流域、汽水域、河川を含む沿岸部ではその両方を行ったと考えられる。
 以上のことから、縄文時代の石錘重量の選択は河川の流速、水深の深さに合わせて行っていると考えられ、複数の条件が重なればより重い石錘を用いられていたのだろう。

図1:河川と石錘の重量を表した地

図2:地域ごとに考えられる漁法