歴史遺産学科Department of Historic Heritage

柴田桃花|増田伝建地区における対雪活動の現状と今後の対雪活動の課題検討 -資料調査と聞き書き調査を基に-
秋田県出身
北野博司ゼミ

 秋田県東南部に位置する増田伝統的建造物群保存地区(以下、増田伝建地区)がある横手市増田町は、寒暖差の激しい盆地型の気候である。そして雪が降りやすい地形となっているため、秋田県の中でも有数の特別豪雪地帯となっている。増田伝建地区は、通りに沿って短冊形に割られた地形に意匠的に発展した切妻造妻入を主とする店舗兼住宅の主屋が連なっている(写真1)。その背後に主屋と連続する鞘付土蔵を接続して豪雪に対応した長大な空間を形成している。
本研究ではその増田伝建地区を対象とする。増田伝建地区における行政と住民の対雪活動の実態を調査し、どのように雪から増田伝建地区を保持しているのかを明らかにするとともに、その中での課題を考察することを本研究の目的とする。そのことで、今後の冬期の増田伝建地区の保持における1つのデータとなると考えられる。
 本研究では、住民への聞き書きと、横手市へのメールでの質問を主な調査方法とした。 住民と行政への聞き書き調査から、鈴木ら(1985)の論文内の表を参考に、当地区における除雪技術の大中小技術システムの区分を行った(表1)。その結果、小技術には雪よせや雪降ろしが当てはまると考えられ、そしてその中に、雪下ろしの際に近隣を意識していること、業者に依頼する場合があることの2つの特徴が見受けられた。これらの作業は個人の作業ではあるが、完全に個人の問題には収まらず、他者が関わっている。つまり増田伝建地区内のさらに小さいコミュニティの関係が私的な部分に含まれると考えられる。この区分を通して、増田伝建地区では重層的に対雪活動の体制が形成されていることが分かった。
 そして住民と行政の課題について、聞き書き調査から、住民は、住民自体の対雪活動および、対雪活動における行政の制度に対して、それを課題と認識しない程、日常化していたことが分かった。例えば、各家での家屋の担い手不足及び雪下ろし業者の担い手不足、対雪活動に対して不安視しても日常と受け入れてしまうことが課題として挙げられる。この課題が今後の冬期における「増田伝建地区」の保持に影響を与えてしまう恐れがあると考えられる。そのため、行政、住民どちらも、対雪活動が日常化しているということを認識し、表面化することが必要なのではないかと考える。

1. 増田伝建地区の街並み

2. 横手市及び増田伝建地区の大中小技術システム分類表