歴史遺産学科Department of Historic Heritage

岡山慧|AI技術を用いた縄文原体の判別方法の開発
埼玉県出身
青野友哉ゼミ

 筆者は文化財行政等に寄与できることを目的とし、人の目での判別が難しい縄文原体を判別するAIの開発を行った。
縄文とは、土器表面に縄を回転押捺して施文された模様である。その施文具(縄)が縄文原体と呼ばれるものであり、撚り合わせ方によって幾多の複雑な種類が存在するため、型式判断に用いられる。この特性上、判別を行う際には照らし合わせを行いながら対応する種類の縄文種を探す作業を行う。筆者はここに自動化できる可能性を見出した。さらに発掘調査現場は様々な問題を抱えている。埋蔵文化財職員数の低下や、工事件数の増加に対して事前発掘調査数が伸び悩む現状にある。これらの問題によりひっ迫している発掘調査の一助となるよう、自動化?効率化を図る第一歩として、ディープラーニングによる画像判別を試行した。対象とした縄文は最も頻出する種類である単節斜縄文LRとRLであり、手法は教師あり学習による2値分類問題である。
 本研究の工程は、1.縄文土器画像データの取得 2.ニューラルネットワークの定義 3.学習実行 4.ニューラルネットワーク編集と考察 の流れで開発を行った。学習用画像データは実物の土器片を撮影したものと、縄文原体を自作し粘土板に回転押捺した画像データである。2~3の段階ではNeuralNetworkConsoleを使用し、判別精度が高くなるよう試行錯誤を行った。
 自作の土器片の判別では画像データ枚数を増やし、関数の追加やプロパティ編集などの試行錯誤をした結果、安定して90%を超える精度を記録した。自作の土器片は言わば土器の模様の内、縄文のみを純粋に抽出したものである。したがって本研究により、縄文はAI による判別が原則的に可能であることを明らかにしたと言える。とはいえ限定的な機能であるため、実物の土器片を学習用データとしたAI 構築を行うことが課題として残る。また本研究を通して筆者は、AI 構築に取り組む前段階として、データベースを作成することがデータ取得を容易にし、発掘調査の一助に直結すると考察した。

1. 二種類の縄文原体

2. 最適化したニューラルネットワーク