文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

山田桃歌|龍澤山善寳寺五百羅漢像の彩色と像容についての考察
宮城県出身
柿田喜則ゼミ

 はじめに本研究は、山形県龍澤山善寳寺にある五百羅漢像の袈裟の彩色と相貌に着目する。五百羅漢像は500体以上安置されており、様々な彩色を施されているが全体に統一性が見られる。これまでに五百羅漢像の着衣と相貌に関する先行研究があるが、相貌と袈裟の彩色の関連性は明らかになっていない。そこで本研究では、袈裟の柄や彩色と相貌に関連性があるのか、袈裟の彩色に決まった配色パターンがあるのか、袈裟の彩色から五百羅漢像の統一性について考察し、先行研究の研究発展を目的とする。
 研究対象について、龍澤山善寳寺は山形県鶴岡市に位置する曹洞宗寺院で、全国の海洋関係者の信仰を集めることで知られる。五百羅漢像は複数の木材を寄せ合わせて作られる「寄木造」という構造である。また、修復した五百羅漢像から、「畑次郎右衛門」という銘文が見つかっている。
 研究方法は袈裟の彩色?相貌?袈裟の柄?配色パターンの4項目を調査する。袈裟の彩色では、袈裟の中で最も面積の多い色を「袈裟の色」として分類し、相貌との関連性について調査する。相貌は先行研究の定義のもと壮年?中年?老年に分類する。袈裟の柄では袈裟の表と裏に着目し調査する。配色パターンでは袈裟の表と裏の組み合わせを調査し、関連性を調査する。4項目の調査結果?考察として、袈裟表の彩色では青系が最も多い結果であった。相貌との関連性として、老年は落ち着いた袈裟表の彩色、中年は老年とは真逆な明るい袈裟表の彩色が多く使用されていた。相貌に合わせた色合いを作者が意図的に使用したのではないかと考える。袈裟表の柄では、相貌問わず吉祥文様が施されていることがわかった。配色パターンでは、袈裟の表と裏の彩色の関連性として、一部対照色相配色の関係であることがわかった。対照色相配色は離れた色相環上で離れた位置にある色どうしの配色のことをいう。対照色相配色を入れることで多彩な印象を与えていると考えれる。おわりに、本研究の結果から袈裟表の彩色と相貌、配色パターンに関して、関連性があると考えられる。さらに、相貌に合わせた色合いや、信仰のある仏像群として吉祥文様を施しているのは、制作者の意図をもって作られていると考えられ、相貌に合わせた色合いや、決まった配色パターンを作ることで、全体の統一性が生まれると考える。