美術科 日本画コースDepartment of Fine Arts Japanese Painting

[優秀賞]
戸田創史|弾痕とよすが
山形県出身
長沢明ゼミ
2900×9200 木、生地、ダンボール、岩絵具、アクリル絵具、墨、箔、綿

日本の端っこから見えた魅力的な景色は、時間が経つにつれ所々欠けてしまい、その土地の持つ歴史がさらに破壊を重ねます。けれども、その消えかけの記憶は、眩いばかりの美しさをばら撒き、もとの形よりも僕の胸を打つのです。


長沢明 教授 評
戸田くんの表現は、「描く」ということの喜びを思い起こさせてくれます。絵画の原点に触れるとでもいうような、ハッとさせる魅力があります。それだけでも十分に魅力的ですが、実はもっと奥が深い作品。
POP(気取らず軽やか)にちりばめられた作品群は、沖縄と北海道の断片が混在して描かれています。 日本列島の両極を描いていることと「弾痕とよすが」という強烈なタイトルを絡めてみると、歴史や民族というものがちらついて見え、そこにはネガティブもポジティブも存在しています。 作者の言葉では、現地での取材の中で、きれいな景色が時間と共に崩れていく感覚あり、それを脆く不安定な支持体に描くことで表現したのだと。ちなみに北海道の断片は雪をイメージした支持体。「消えかけの記憶ははかなくも眩い。」私はこの言葉に、彼の決意を感じ、それが見事に表れた作品だと思います。