美術科 版画コースDepartment of Fine Arts Printmaking

[優秀賞]
遠藤有彩|生まれ変われるなんて嘘じゃん/後悔なんてしていない/他
福島県出身
950×1030㎜/1300×650㎜ 木版画


中村桂子 教授 評
もの作りの世界では「手で考える」という言葉が使われることがある。アイディアや思索を巡らすだけでなく、実際に手を動かし形=可視化し、そこからまた思考と試行を繰り返すことで高い完成度を目指す作品制作を指している。日常的な作業の繰り返しのなかで感覚が研ぎ澄まされ、一本一本の手指が精度の高い思考センサーのように動き始める。作品の内に深く入り込んでいく喜びがある一方で、何も得られない落胆や焦りを受け入れ、試される時間でもある。
遠藤さんの4年間は「手で考える」毎日であった。過去の記憶と向き合いながら伝統的な木版画技法を手掛かりに、一歩ずつ表現の幅を拡げてきた。そして一年次よりずっと描いてきた狐の面を被った少女が最後に手がけた小品2点において、それを外そうとしている。髪も制服も混然として「制服を着た少女」でも「面を付けた少女」でもない紛れもない「その人」である。遠藤さんの今後の制作を楽しみにしている。