大学院Graduate School

加藤裕也|住宅の部分断熱改修における改修効果と改修プランの考案に関する研究 ー室温?エネルギー消費量の変化、改修と間取りの関係性についてー
宮城県出身
三浦秀一ゼミ

 本研究では住宅における部分断熱改修について取り扱っている。部分断熱改修とは、住宅全体を改修範囲とする一般的な断熱改修とは異なり、必要な箇所に改修を施す改修方法である。この改修方法では一般的な改修よりも施工面積を小さくすることが可能となり、改修費用が比較的安価となる手法だ。また、日常生活で利用しない居室への施工がなくなるため、無駄のない改修方法となっている。この改修方法ではリビングや居間、茶の間といった住人が主に利用する居室、主たる居室を中心とし、隣接するキッチンやダイニング、寝室、浴室、洗面所といった改修箇所を平面図上で一筆書きのように囲み、断熱区画を設け、改修計画を行う。このように計画を行うことで、断熱区画内の熱損失を抑えるだけでなく、暖房の暖気を断熱区画内で循環し、効率的な室温の調整を行うことが可能となる。
 研究を進めていった結果、部分断熱改修の評価を行うにあたって、一般的には住宅全体を対象として外皮平均熱貫流率(以下UA値)にて評価を行っているが、改修箇所に着目した評価を行う必要があると考えた。理由としては、部分断熱改修の外壁への改修が限られているという特性上、住宅全体で評価を行えば、改修を行っていない箇所も評価に含まれてしまうため、一般的な評価基準では低い結果となることが分かった。そのため、住宅全体で評価を行うのではなく、改修箇所の断熱区画を部分的に評価対象とすることがよいと考えられた。その結果、研究内で取り扱った研究対象では部分評価UA値は0.41W/㎡?Kとなった。この値は、研究対象の所在地地域区分4における国の省エネ基準等級4のUA価0.75 W/㎡?Kを上回り、ZEH基準0.60 W/㎡?Kも上回るという数値となっている。この結果から、部分断熱改修は既存住宅でも国の基準は上回り、その上の基準も超えることが可能であると分かった。
 本研究では実際の部分断熱改修事例の部分評価UA値、室温実測実験や、暖房費シミュレーションの分析、既存住宅の改修計画考察から、部分断熱改修の改修効果について研究を進め、既存住宅の快適性向上、暖房コストの削減についての一助となることを望んでいる