結城叶望|錦絵『紫式部源氏かるた』の色材調査とアーカイバルケースの作成
山形県出身
村上智見ゼミ
本研究では、保存科学研究室が保管する錦絵『紫式部源氏かるた』を対象として色材調査を行った。『紫式部源氏かるた』は平安時代に紫式部が著したとされる『源氏物語』を題材として、二代目歌川国貞が1857年に描いたとされる錦絵である。本研究は、今後の授業やオープンキャンパスなどで本作品を使用する際に作品理解を深めるためのデータの一つとして残すことを目的とした。
色材調査は、使用されているすべての色調が対象となるように76箇所を選別し、それぞれの調査箇所でデジタルマイクロスコープによる観察、蛍光X線分析、可視光反射分光分析を行った。ただし、黄色の調査箇所のみ色材を推定するには情報が不十分だったため、三次元蛍光スペクトル分析を追加で行った。調査の結果、赤色には弁柄、青色?水色にはプルシアンブルーや藍、緑色には石黄+プルシアンブルー、黄色には鬱金、紫色には紅花+露草、オレンジ色には紅花+黄色色材、茶色には弁柄、白色には胡粉、黒色には墨、灰色?青色+黒色には墨+藍が使用されていると推定した。紫色や緑色のように二つの色材を組み合わせて色を表現している混色も確認することができた。今回の色材調査を受けてさらに明確に色材を推定するには、一部箇所にしか行わなかった三次元蛍光スペクトル分析や紫外線による蛍光反応の確認、光学顕微鏡による詳細な観察などを追加で行うことが必要だと考える。
本研究では色材調査のほかに、研究対象作品を保管するためのアーカイバルケースの作成も行った。元々作品が保管されていたものは長期的な保存に適していないと判断したため、長期的な保存に適していることに加え、作品を使用する際に扱いやすいような工夫も取り入れたケースを作成した。工夫した点として、色材に使われている顔料の変色や褪色が起こらないようにケースに使用する素材をすべて中性にした。また、ケースの形をタトウ式にすることで作品を安全に持ち運びできるようにした。他にも、作品の下にマット紙を敷いて作品にかかる負担を軽減したことや、接着剤を使用しないことでケース自体の破損を防いだことも長期的な保存のために工夫した点である。