歴史遺産学科Department of Historic Heritage

前野日和|歴史地区における防災に関する研究ー重要文化的景観「最上川の流通?往来及び左沢町場の景観」を事例としてー
山形県出身
志村直愛ゼミ

 歴史的町並みは、有形文化財であるとともに生活の場として地域社会を構成し、地域の習俗?生活文化が継承される場でもある。一方で、歴史的町並みは日本建築本来の木造建築である場合や、その歴史や文化を保存?維持していくために家屋を改変し難いなど、防災上における危険性が高いという一面がある。 山形県大江町左沢に位置する「最上川の流通?往来及び左沢町場の景観」(図1)は、2013(平成25)年に国の重要文化的景観に選定された。近世の城下町の面影や、通りには最上川舟運等の流通?往来による往時の繁栄を偲ばせる商家や蔵が今に残されている。一方で、選定区域内の最上川沿いの百目木地区では、2022(皇冠体育官网4)年8月の最上川の氾濫をはじめとする水害を幾度も経験している。重要文化的景観における防災研究は未発達であり、左沢町場は重要文化的景観の中でも歴史的建造物が立ち並ぶ地域であるため、近年の災害の激甚化?頻発化を踏まえても左沢の重要文化的景観における防災研究は急務といえる。
 本研究は、重要な構成要素の多くが集約する「御免町、内町?横町、原町通り周辺」(図2) と、最上川の氾濫による水害を幾度も受ける「最上川沿い」(図3)に含まれる建造物とそこに居住する住民を対象に、歴史地区における防災上の課題点の抽出と、防災活動の徹底及び住民の防災意識の向上を目的とした。
 対象地域における防災上の課題として、社会的脆弱性が挙げられる。対象地域では、人口減少や高齢化による地域活動の衰退、空き家の増加による建物の健全維持、災害予防や災害対応の体制の不安定化等が懸念される。社会的脆弱性を少しでも緩和するために、地域間の連携や空き家管理体制の強化が重要である。 また、重要文化的景観を視野に入れた防災活動も課題である。対象地域では重要文化的景観における特別な防災施策や防災活動等は行われておらず、自主防災組織自体がない地区や、重要文化的景観の選定後もその活動に変化はない。重要文化的景観の保全と災害対策が両立した防災方策が重要だ。 一方で、対象地域では一人暮らしの高齢者への声がけや生活面での協力、祭りを通じた地域間交流など、先述した課題を補う共助の力が存在している。重要文化的景観を後世に継承していくため、 景観保全と災害対策の両立、そして共助の力を重視した防災活動が肝要といえる。

1. 最上川と左沢町場

2. 左沢町場の町並み

3. 最上川沿いの町並み