歴史遺産学科Department of Historic Heritage

後藤優和|福島県内の中世城館跡-福島県耶麻郡を事例として―
福島県出身
岡陽一郎ゼミ

 1980年代を境に、全国的に中世城館研究が盛んになり、各自治体も中世城館の調査を実施し、各城館の調査結果をまとめた報告書が作られている。福島県も例外ではなく、福島県教育委員会によって、県内の中世城館の調査が実施され、1988年に『福島県の中世城館跡』にて報告されている。しかし調査で確認された福島県内の城館1997か所のうち、実際に、報告書に縄張り図を含む調査の詳細が記載されている城館は、215か所に留まっており、1782か所の城館は、いまだに未踏査?未調査の状態である。一方で、各市町村史に目を向けると『喜多方市史』や『会津高田町史』には、城館の調査について記載されている。しかし、『喜多方市史』では、縄張り図の記載はなく、『会津高田町史』は、縄張り図のある城館もあるが、小規模城館については、縄張り図の記載はない。以上のように、福島県の中世城館研究では、大規模かつ有名な城館の研究が中心であり、小規模城館の調査?研究は実施されていない。これらを踏まえ、本研究では、福島県内において、城館調査の対象外となり、未踏査?未調査の状態にある城館の、発見及び調査を目的とする。
 本研究の成果は、5点ある。ここでは、その中でも特に重要な3点の成果について紹介する。1点目は、未調査?未踏査の中世城館の発見及び調査についてだ。本研究では、4か所の未踏査?未調査の城館を発見し、縄張り図を作成した(図1)。作成した縄張り図は、4か所の城館の資料として活用でき、私だけでなく、今後耶麻郡で中世城館研究をする方々の一助となる。2点目は、平地の中世城館研究における地籍図の有用性だ。今回調査した城館の一つである上岩崎館の現地調査では、西半分の遺構の壊滅を確認しが、地籍図を用いることで、縄張りの完全復元が可能となった(図2)。このように、地籍図を用いることによって、平地城館であれば、近代以降に失われた城館に限定されるが、縄張りの完全復元が可能であると実証した。3 点目は、『会津鑑』及び『会津古塁記』の信頼性に関する検討だ。両資料は、上岩崎館の調査において、現地調査と大きく異なる記述がみられた。このことから、両資料の作成者は、資料作成の過程で、現地調査をしていない可能性が指摘できる。また、両資料は、作成年?作成者がともに不明である。以上から、両資料の現地情報は信頼性に欠け、両資料を使用した調査?研究は、再検討が必要である。

1. 上岩崎館 縄張り図

2. 岩崎地区及び周辺地籍図