建築?環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
松本みなみ|建築の価値を再考する
宮城県出身
佐藤充ゼミ

地球上におけるヒトの生産活動とその遺物は、誠実さを問う所在はなく、善悪をジャッジする指標もない。生物の営みという認識のうちに、興っては亡びる現象的な事象として消化されるのみである。ではこのとき、《建築》をつくるという事象の価値はどこにあるのだろうかというのが私の問いである。
したがって本研究では、《建築》という観念に対する思考とそれにともなう価値体系の探求を目的とする。


佐藤充 准教授 評
「建築をつくるという事象の価値とはなんだろうか?」この問いに対し、進化生物学、心理学、倫理学、文化人類学などの文献を読み漁り、松本は、「建築は地球でのヒトの生存手段として生じたものであり、現代において、建築をつくらないという選択をすることが自然である」という答えに行き着く。しかし、建築をつくらない、つまり建築設計を否定しているように捉えられるこの態度は、決してネガティブなものではない。考現学的に小さな風景を採集し、漫画として表現した本作品は、ただ単にアノニマスな事象のカタログとしてではなく、何気ない風景に対する新たな眼差しと、環境構築行為における新たな価値体系が見えてくる。感受性を研ぎ澄まして身の回りの風景を観察すると、そこにはたくさんの暮らしをアップデートするための微かな創造行為が潜んでおり、それらは、ヒトがそこで暮らすための必然性を示唆しているのである。キャプションが一切ない漫画は、そこに描かれた創造行為とそのコンテクストを語りかけてくる。