大好きな「食べ物」をモチーフに、イラストを通して自分の世界を表現していく/イラストレーター?卒業生 砂糖ゆき

インタビュー

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手がけたイラストが全国の書店や図書館に並ぶ喜び

――はじめに、砂糖さんの現在のお仕事内容について教えてください

イラストレーター 砂糖ゆきさん 『ぱっかーん!』
2022年9月に出版された『ぱっかーん!』(エンブックス)

――イラストレーターになることを考えたのはいつ頃からですか?

砂糖:学生の頃から「いつかイラストレーターになりたい」というのは考えていましたが、就職する上で最初に目指したのはグラフィックデザイナーですね。卒業後、パッケージデザイン会社のデザイナーとして6年半ほど働いて、その間も個人的に絵の仕事を受けたりしていました。パッケージデザインの仕事も楽しく充実していたんですが、より絵の方に集中したいという思いが強くなってきて、ちょうどイラストの依頼が増えてきたタイミングで独立を決めました。

イラストレーター 砂糖ゆきさん お話されている砂糖さん
お話をお伺いした砂糖さん

――砂糖さんのイラストは食べ物をモチーフにしているものが多くありますが、その理由は?

砂糖:なんか、気付いたらそうなっていました(笑)。学生の頃から食べ物を描いてはいたんですけど、もともとそんなにこだわっていたわけでもなくて、ただ好きなモチーフが食べ物だったので描き続けていたという感じですね。それをSNSにアップしているうちに食べ物のイメージで認識していただけるようになって、それで食べ物の絵のご依頼が多くなったんじゃないかなと。あとは私の作家名が「“砂糖”ゆき」なので、そこも食べ物とリンクしやすいのかもしれません。

――これまでで特に印象に残っているお仕事を教えてください

砂糖:婦人之友社で出している『婦人之友』という雑誌の表紙を、2020~2021年度の2年間担当させていただきました。それまでは単発ものだったり規模が小さめのものが多かったので、連載のお仕事をいただくことができたというのは私の中で大きかったですね。毎月出すということでプレッシャーもありましたし、毎月テーマを表現していくこと自体初めてだったので、編集者さんにアドバイスをいただきながら進めていきました。やはり書店に並ぶ雑誌なので、名刺代わりに「こういう仕事をしている砂糖です」というのが伝えやすくなって、自分の中ではターニングポイントになったお仕事だなと感じています。しかも2022年には、担当した2年分の表紙の原画展も開催させていただくことができました。そこでまた新たな縁が生まれたりして、本当に良い機会になりました。

イラストレーター 砂糖ゆきさん 砂糖さんが手掛けたフリーペーパーの表紙イラスト
砂糖さんが手掛けたフリーペーパーの表紙イラスト

――砂糖さんが思う、このお仕事の魅力とは?

砂糖:やはり自分の世界を一番表現できるところですね。いつも「砂糖さんらしい絵を描いてほしい」といった感じでご依頼いただけるので、それがすごく嬉しいです。ちなみに私はアクリルガッシュという絵具を使って絵を描いているんですが、中でもアイボリーホワイトという色が好きで、この色のチューブだけすごい勢いでなくなるんですよ(笑)。アクリルガッシュは使い方によっていろんな表現ができる画材で、水を多くして水彩のようにする方もいますし、ムラなく綺麗に塗られる方もいます。私の場合は水をかなり少なくして硬めのテクスチャにして、それを厚めに塗ることであえて筆跡を残すようにしています。この描き方だと、例えばパンのイラストであればあのガサガサした感じや香ばしい感じが表現できますし、絵具をしっかり重ねて塗る分、立体感も出てくるんですよね。それから背景を擦れさせるのも好きで、そういった描き方が私のイラストの特徴であり、よく「砂糖さんらしい」と言っていただけている部分なのかなと思います。

イラストレーター 砂糖ゆきさん 砂糖さんが手掛けた表紙イラスト
砂糖さんが手掛けた『星栞 2023年の星占い 牡羊座~魚座』(石井ゆかり著、幻冬舎)の表紙イラスト

夢に向かって決意を固めていった学生時代

――グラフィックデザイン学科に進学しようと思ったきっかけは?

砂糖:もともとは日本画をやってみたいと思っていたんですけど、細かく丁寧に描くというのが性格的にあまり向いていないような気がして。また就職のことを考えると、グラフィックデザイン学科の自由度が高くマルチに学べるところが、間口を広くする上でもとても魅力的に感じました。それから絵を描く授業や絵本を作る授業があったことも、この学科を選ぶ決め手になりました。

――実際に学んでみていかがでしたか?

砂糖:絵を描く授業の他にも、前職でやっていたようなパッケージデザインについての授業やポスターの授業など、本当にいろんなことを学びました。エディトリアルデザインの道に進む人もいれば、広告の道に進む人もいたりして、その中で自分の適性が分かったというのはすごく大きかったです。入学した頃は「イラストやりたいな」くらいのぼんやりした気持ちだったのが、卒業する頃には「将来的には絶対イラストやりたい!」という決意に変わっていたので。

でも今でこそある程度自分のタッチを確立できてきたというか、自分でもようやくそこそこ描けるようになったかなって思えますが、大学の時はまだまだ拙くて。高校生の時はずっと吹奏楽をやっていて、正直、絵を描いたことはほとんどないというところからのスタートだったんですよね。

――そんな中、特に思い出に残っていることは?

砂糖:学生のうちに一回は個展を開きたいと思っていたので、大学4年生の夏に東京で個展を開いたんです。技術も何もかも足りない展示ではあったんですけど、挑戦するってすごく大事なことだと思っていましたし、「イラストレーターになりたい」とか「個展を開きたい」っていうのは、とにかく言葉にして口に出すようにしていました。そうすると自分でもせざるを得なくなるので、まずは気持ちからというか。もちろん結果を出すのも大事ですけど、結果は焦らなくてもそのうちついてくるんじゃないかなっていうのがあったんですよね。それで4年の時に個展を開いて、そこで初めて作家名を、本名から「砂糖ゆき」に変えました。今思うとそれも一つの決意だったのかなと。見に来てくださった先生からは厳しい意見ももらいつつ、「頑張ってるじゃん」と励ましの言葉もいただいて。その後は何をやるにしても「あの時、個展を開いた」っていうのが自信になり、また頑張る際の指標になりました。

イラストレーター 砂糖ゆきさん 公園にて

――今後について考えていることなどあれば教えてください

砂糖:私のSNSを見てくださっている方って、20~30代くらいの同年代の方がすごく多いんですね。でもお仕事の案件としては40~50代の女性向けのものが多くて、そして最近ではもう少しシニア向けの家計簿とか伊勢丹のお中元?お歳暮のお仕事とか、50~60代くらいの方をターゲットにしたものも多くなっていて。でもその一方で赤ちゃん向けの絵本を出したり、媒体によって赤ちゃんからシニアまで、いろんなところで使っていただけているというのが、私の中で今、一番嬉しく思っていることなんですね。なのでそれを今後もどんどん続けていけたらと思っています。ただどうしても女性向けの媒体が多いので、男性向けの媒体でもお仕事してみたいですね。

――それでは最後に、受験生へメッセージをお願いします

砂糖:例えば将来目指すものがあって、そこに向かって一生懸命頑張るんだけど、ちょっとうまくいかなかったりするとすごく落ち込んでしまうことってあると思うんですね。でも私は回り道も悪くないかなと思っています。それは、当時進路で迷っていた時、ゼミの先生だった坂東慶一(ばんどう?けいいち)先生に「いろいろ寄り道していいよ」と言ってもらえた経験が大きくて。卒業後、デザイナーとして勤めていた時期も葛藤だったり悩みだったり、「もっと絵を描きたい」という思いがあったりしたんですけど、実際はその頃も働いていて楽しかったですし、その時のデザイナーとしての経験が今生きているというのをすごく感じるので。だからこそ今更ながら、いろんな経験を積むって大事だなと思っています。私はありとあらゆることに対しての経験や知識が少なすぎたなっていうのが当時の反省点ですね。例えば映画や小説から得た情景や体験が、即ち絵に生きてくるようなこともあるので、ぜひ皆さんも映画やマンガ、運動、音楽、何でもいいので、高校生のうちからいろんなものを見て知っておくと良いんじゃないかなと思います。

イラストレーター 砂糖ゆきさん 公園にて

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「『砂糖さんのタッチが気に入って依頼しているので、好きな様に描いてください』と言ってくださる担当編集者さんが多いんですよね」と嬉しそうに話してくださった砂糖さん。誰が見ても温かい気持ちになれる。そんなイラストを描けることも砂糖さんの大きな強みであり、魅力の一つになっていると感じました。将来への思いを言葉にして出すことで自らを奮い立たせてきた学生時代があったからこそ開かれた、イラストレーターへの道。今後もその活躍から目が離せません。

(撮影:永峰拓也、取材:渡辺志織、入試広報課?土屋)

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東北芸術工科大学 広報担当
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