地域の人たちが楽しく活動を継続していくために、伴走者としてできること/立川市子ども未来センター?卒業生 漢人さち

インタビュー

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「暮らしをワクワクさせたい」という思いに感化されて

――はじめに普段のお仕事内容を教えてください

漢人:ここは立川市子ども未来センターの基地、通称「みらきち」と呼ばれている部屋で、市民活動団体さんや市民ボランティアさんなど現在約50団体の登録があります。その活動内容は絵本の読み聞かせや子ども向けに勉強を教えるものなど幅広く、私はその団体さんが市民に向けて開催するコミュニティプログラムの企画を一緒に考えたり、プログラムを広報するお手伝いなどを担当しています。企画の段階から当日の本番まで、サポートしながら伴走していくようなポジションになりますね。

具体的には、プログラム実施に向けて作成してもらうシートのチェック、備品や会場の予約などといった事務的なサポートから、活動の中で生まれる悩みごとの相談を受けたりしています。みらきちに常駐していると、様々な活動団体さんが訪れます。団体内の悩みやプログラム実施に向けて相談にくる団体さんもいれば、コーディネーターに世間ばなしをしにきてくれる団体さんも。そこでじっくりお話を聴きながら、それぞれの団体さんにあったサポートを行っています。例えば、集客に悩んでいれば、立川市で運用しているSNSや市報への申請依頼、「みらきち」として運営しているSNSやカレンダー、ホームページを活用して広報のお手伝いをしたり。地域団体や企業、学校と何かしたいようであれば、お繋ぎすることでネットワーク構築のお手伝いしたり。プログラム当日は、写真撮影や実施サポート、実施書の作成、アンケート集計をしたりと、本当にさまざまですね。

あとは団体同士の交流を目的とした懇親会や勉強会の実施に加え、年に2回ほど、協働イベントというコミュニティプラグラムを集めたお祭りを開催しているので、実施に向けてワークショップ運営や、チラシの作成など準備もしています。

立川市子ども未来センター 漢人さちさん お話をされる漢人さん
お話をお伺いした漢人さん

――ちなみに漢人さんの本来の所属先は、コミュニティデザインを手がける株式会社studio-Lさんとお聞きしました

私はすごくおじいちゃん?おばあちゃんっ子なんですけど、私の地元であり、二人が住む宮城県大崎市の家に継ぎ手がいない状態なんですね。なので、自分が学んだことと掛け合わせてその家を活用していきたいという思いがあって。二世帯住宅のような建物になっているので、二人が使っていない方を活用するイメージですね。それで考えたのが、1杯のコーヒーで何分も滞在してもらえるカフェという場でした。その流れから、卒業後は食や会話を通してまちづくりを目指す飲食カフェの会社に就職したのですが、配属された店舗は企業の福利厚生の一環として社員同士の交流をねらいとしたカフェで。働くうちに、もう少し人の暮らしに近い場所で働けたらなって思うようになりました。そういった面でも今の仕事はすごく自分にマッチしていると感じます。

立川市子ども未来センター 漢人さちさん お話をされる漢人さん

――どんなところにこのお仕事の魅力を感じますか?

漢人:市民活動団体さんとか市民ボランティアさんがされていることって、お仕事ではないじゃないですか。もっと暮らしをワクワクさせたいというか、「楽しい場所を作りたい」とか「誰かに提供したい」みたいな思いが念頭にあって活動されている方たちなので、そこをすごく尊敬します。また自分もそのような暮らし方が豊かだと感じながらここで働いているので、参考にさせてもらいながら過ごせるところが魅力ですね。そしてプログラムの開催を通して、いろんな人たちの嬉しそうな顔を想像したり、実際に近くで見られるところが一番気に入っています。

――お仕事される上でいつも大切にしていることは?

漢人:やろうと思えば何でもお手伝いできてしまうポジションだからこそ、団体さんたちが自分たちの力で楽しく活動を継続していくためにはどんなお声掛けやサポートの仕方が良いのか、というところを常に気にしながら頑張っています。そのためにも、普段の日常会話が大切です。活動経験豊富な団体さんからは、問題があったときの乗り越え方や取り組んでみて良かったアイデアを教えてもらえますし、常に団体内の状況を知ることができます。そこを把握することで地域団体や登録団体同士のマッチングにつながり、団体内の課題が解決したり、より魅力的なプログラムが生まれたりします。

立川市子ども未来センター 漢人さちさん 業務中の漢人さん

大学や仕事で得た経験すべてを糧にして作る未来

――コミュニティデザイン学科への進学を選ばれたきっかけは?

漢人:高校の時に野球部のマネージャーをしていて、食べて強くなる「食トレ」というものを担当していたんですね。私はイラストを描くのが好きだったので、手作りのチラシを選手に配って「こうするといいよ」と伝えたりしていたんですけど、それがすごく楽しくて。そういうふうに情報を見やすくして伝えるみたいなことに興味があって、当初はグラフィックデザイン学科を目指そうと思っていました。でもコミュニティデザイン学科で勉強できることの幅広さを耳にして、高校生ながら「コミュニティデザインという分野は社会のどんなところでも役に立つ」というのを感じました。そこにプラスしてグラフィックデザインの勉強も一緒にできればと思い、コミュニティデザイン学科を選びました。

実際に入ってみたらすごく大変でしたけど、そんな中でも、自らちゃんと愛着を持って熱を入れて活動したいと思えるものができたからこそ、何とか卒業までたどり着けた気がします。当時は山形県高畠町にある二井宿で、おちゃ小屋という地域の小学生から高校生くらいまでの子どもたちの居場所作りに取り組んだり、まちへの愛着を育むためにはどうしたらいいかを考えるスタジオに所属していて、それが純粋に楽しかったから続けられたんじゃないかなと。常に楽しくも大変でしたが、活動を通して居場所づくりに興味が湧きました。いざ、進路を考え始めたとき、祖父母の家を活用した居場所づくりが、目標として自分の中に芽生えていました。

――当時の学びの中で、今も生かされていると感じるものはありますか?

漢人:多様な生き方に触れ合うことができたところですね。日常的に授業の中で魅力的なゲストの話を聞くことができたり、住み込みで地域での暮らしを体験させてもらいながら、様々な人の暮らし方を知ることができました。それをもとに「自分はこういうのは難しいかな」とか、「この人のこういうところを取り入れたいな」といった作業を4年間通して行ってきたので、その経験から自分の感性を見つめ直すことができたように感じます。

立川市子ども未来センター 漢人さちさん 業務中の漢人さん

――また勉強以外の部分で思い出に残っていることがあれば教えてください

漢人:海外に興味があったので、韓国でのワークショップに参加したり、夏休みに一人で台湾に行ってみたり、それから大学2年に上がる前の春休みには短期留学でイギリスに行ったりと、忙しいときほどフットワーク軽く楽しんでいました。韓国のワークショップでは、現地の大学生と今でも連絡を取り合うくらいの仲になって。お互い韓国語?日本語ができないので、翻訳アプリを使っての会話だったりするんですけどね。現在、彼女はグラフィックデザイナーとして働いているので、この先何か一緒に仕事ができたらな…なんて話しで盛り上がっています。

――今後の目標は、やはり大崎にあるご実家の活用でしょうか?

漢人:そうですね。今ちょうど地元や大学の友達にお願いできることはないか考えたり、お誘いをしたりしている段階で。私は人前に立つのがちょっと苦手で、あまり人を引っ張っていけるタイプではないんですね。でも、いろんな人の意見を取り入れながらその場所を作り上げたいと思っているので、そういったこともここで学んでいけるよう意識しながら、日々活動しています。ただここでの仕事も好きで、離れるとなるとすごく寂しくなるので、仕事も実家の活用準備も二刀流でできるところまで進めていけたらと思っています。

――それでは最後に受験生や後輩へメッセージをお願いします

漢人: 感動できる機会にたくさん出会ってほしいですね。感情が大きく動く経験って数えるほどしかない気がします。どんなことに心が動くのか観察することで、自分の感性を整理していくことが私にとって重要でした。そして芸工大にはそういった機会がたくさんあると思っています。

ちなみに私の場合は家族というのがすごく重要で、そこが健康で明るい場所じゃないとどこに行っても自分は元気に頑張れない、みたいなところがずっと中心にあるんですね。「海外のあちこちに行きたい!」とか「東京で働けて楽しい!」って気持ちはあるんですけど、結局はそこが一番大切で。なので、自分や家族はもちろん、その周りに住んでいる人にとって居心地の良い場所が作れたらなって思っています。飲食できるだけでなく、例えばまちの人が得意にしていることがあれば、その人が講師となって教室を開けるとか、何かそういう発掘をしていきたいですね。この立川市子ども未来センターのように、みんなのワクワクを増やせる拠点を目指したいです。

立川市子ども未来センター 漢人さちさん お話をされる漢人さん

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大学での学びに大変さを感じつつも、実際にまちへ出て、地域の人たちと関わりながら力を養っていけることにやりがいと楽しさを感じていた漢人さん。「私は2020年3月に卒業?上京だったので、コロナ禍で仕事に行けない時期が何ヶ月も続いて。そんな時、一緒におちゃ小屋をした二井宿のお母さんたちが山菜を送ってくれたんです」と、卒業した今もその縁が続いていることを教えてくれました。そんな漢人さんが見つけた、家族と自分、そして地域で暮らすみんなが幸せになれる居場所を作りたいという夢。市民活動コーディネーターとして、団体やボランティアの方々と丁寧に向き合い、支援することで生まれる喜びや経験の数々。それを糧に、夢の実現へ向けて着実に前進していく姿はとても生き生きとしていました。

(撮影:永峰拓也、取材:渡辺志織、入試広報課?土屋)

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東北芸術工科大学 広報担当
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