美術科 テキスタイルコースの学生募集停止について
美術科 工芸コースと美術科 テキスタイルコースを基礎に、2023年度新たに「工芸デザイン学科」を開設しました。これに伴い、両コースは2023年度からの新入学生募集を停止しましたが、現在の教育内容と教育体制は、在学する全ての学生が卒業するまで引き続き存続します。
テキスタイルが社会を彩る
テキスタイルはさまざまなシーンで活用される素材です。ファッションやインテリアへの活用はもちろん、現代では関節の治療に編み物を応用したケミカルレースが用いられ、ロケットにも炭素繊維が活用されるなど、さまざまな形にデザインされ、活躍の場を日々拡張しています。しかし、素材の数は日々更新される中で、繊維が布になる構造や繊維に色が定着する原理は実は何千年も変わらぬままです。要するに素材の力とデザインの力が混ざり合うことで新たなテキスタイルの在り方を生み出し、そのテキスタイルが新たな暮らしや社会を形成しているのです。素材の力を引き出すには、素材を熟知し自らの手で試行錯誤することでしか見出せません。本学テキスタイルコースでは「素材からのモノづくり」をテーマに、一般的な染織技法?表現方法に加え、繊維産地である山形でしか体感できない学びを通して、新たな暮らしのクリエイションと次代を担うクリエイターの輩出を目指しています。
Feature
特徴
触覚と素材からデザインし、モノづくりへつなぐ
さまざまな繊維の種類や糸の成り立ちと繊維が布になる原理、染料が生まれる過程と染色原理、多様なテキスタイルを生み出すための技法を自らの手を通して体感的に捉えます。触覚による発見はイメージやアイデアだけでは生み出すことのできないクリエイションにつながり、新たなテキスタイルを生み出します。また、新たに生まれたオリジナルテキスタイルを素材とし、インテリアやファッションをデザインしていく術も学び、さまざまなシーンで応用可能なスキルを養います。
個々の「得意」が見つけられる豊富なカリキュラム
多種多様な素材と技法をファッションやインテリアなどのデザインシーンやインスタレーションなどのアートシーンなどに応用するテキスタイル分野の着地点は広範囲に及びます。将来を見据えながらもさまざまな課題を通して、多角的かつ体感的にまだ見ぬ自身の可能性を模索することからスタートし、自身の進むべき道を見定め、他者に負けない得意分野を伸ばしていきます。
地場産業を生かした課題を通じ、実社会とのつながり見出す
日本は世界屈指の繊維産業国です。その中でも、山形には染色材料や織物、ニット、和紙、樹皮繊維など、日本屈指の地域特有素材や産業技術があります。これらの加工方法の習得をメインとした演習課題を通して、山形でしか養うことのできないモノづくりの価値観を養います。また、地場産業や伝統工芸品の生産現場の視察も行うことで、地域を捉えながら実社会を意識することで将来ビジョンの形成を促します。
Curriculum
授業紹介
1年次
思考?造形の基礎を養い、テキスタイルの基礎を学ぶ
モノを生み出すために必要なアイデア展開の論理的思考法の体得から始まり、アイデアを具現化するための平面?立体双方の造形力を養います。また、テキスタイルの基本である「染め」と「織」の基礎を手工芸的に学び、テキスタイルの本質を体感的に捉えます。さらに、各課題ではデザイン思考を取り入れることにより、建設的で他者を思いやる社会性を帯びた感覚を養います。これら、思考?表現?素材を三位一体として扱うことのできる次代を担うクリエイターの土台を形成します。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 | 工芸論 生活とグラフィックデザイン |
テキスタイル基礎演習 【アイデア展開?サーフェイスデザイン】 美術基礎演習 【デッサン?彫塑】 |
コンピュータ基礎演習 |
後期 | 芸術鑑賞の喜び デザイン史 衣服論 染色論 色彩学 インタフェースデザイン論 |
テキスタイル素材トレーニング1 【染色の原理?染色技法習得?インテリア】 テキスタイル素材トレーニング2 【織の原理?織技法習得】 |
芸術思考論 |
2年次
地場産業の魅力を知り、インテリアとファッションの原理を学ぶ
テキスタイルを作り出す技法はさまざまですが、ニットと和紙は山形が育んだモノづくりの力です。これらの技法を自らの手で習得しながら多彩なテキスタイルの可能性を理解し、地場産業の魅力に対する感覚も養います。そして、自らの手で発見した素材?技法の魅力を生かし、生活空間や商業空間を構成するパーテーション(インテリア)や衣服造形(ファッション)のデザイン?制作を通して、実践的な資質を養います。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 | プロダクトデザイン入門 インテリアデザイン論 |
テキスタイル素材トレーニング3 【地域素材?インテリア】 美術科共通演習 【日本画/洋画/版画/工芸/総合美術から2つ選択】 |
|
後期 | 美術の見方 クリエイターのための経営学 キャリア形成論 |
テキスタイル?身体考察演習1 【地場産業?ファッション】 テキスタイル?身体考察演習2 【染色技法?ファッション】 |
美術と実践力 |
3年次
デザイン力と思考力、高度なスキルを身に付ける
エクステリアをテーマとした課題に取り組み、野外でのテキスタイルの可能性を模索しながら、素材?技術を条件に合わせながら取捨選択することで、デザインに必要な問題を解決する能力を養います。また、多様なテキスタイル分野におけるそれぞれの方向性を見極め、「染」「織」のどちらかの領域を選択し、アナログとデジタルの特徴を捉えながら技術のスキルアップと内容のステップアップを図ります。さらに、ポートフォリオ制作を通して社会につながる術を学びます。
〈 講義 〉 | 〈 演習 〉 | 〈 実践 〉 | |
---|---|---|---|
前期 | ブランド? マーケティング入門 |
テキスタイル応用演習1 【技法と素材の選択?エクステリア】 テキスタイル応用演習2 【テキスタイルデザイン?プロダクト】 |
キャリアマネジメント アーティストマネジメント ポートフォリオ研究 |
後期 | テキスタイル応用演習3 【「染」「織」の選択?高度な伝統技法の習得?染織工芸】 テキスタイル応用演習4 【テキスタイルデザイン?クライアントワーク】 |
キャリアマネジメント アーティストマネジメント ポートフォリオ制作 |
4年次
自身が設定した領域の研究を深める
3年次までに学んだ技術や素材、知識、思考を生かし、テキスタイル分野と社会を照らし合わせながら自分自身で研究テーマを設定し実験と検証を重ねます。それぞれの進路や方向性をも考慮し、デザイン、アート、工芸の領域においてに必要とされる可能性と価値を見出し、実社会とつながりながら卒業制作へ向かいます。
? | 〈 演習 〉 |
---|---|
前期 | テキスタイル?環境造形演習 【インテリアテキスタイルデザイン/ファッションテキスタイルデザイン/テキスタイルアート/染織工芸の中から領域を選択?卒業制作へ向けて研究を深め試作、課題発見、検証を行う】 |
後期 | 卒業制作 【インテリアテキスタイルデザイン/ファッションテキスタイルデザイン/テキスタイルアート/染織工芸の中から領域を選択?研究をもとに本制作へ向かう】 |
Career
進路
Professor
教員紹介
安達 大悟 コース長
誰もが必要とするモノ、それがテキスタイル
テキスタイルは「何でも屋さん」です。敷物や間仕切り、衣類、袋、居住空間など、暮らしの全てを支えてきました。その結果、さまざまなクリエイション領域が生まれた分野であり、今もなお生まれ続けています。これから入学する皆さんにとっては、学生時代に全ての領域を網羅することは難しいかもしれませんが、多様な世界を受け入れる器量と工夫する力こそがテキスタイルを通して学べる魅力ですし、デザイナーやアーティスト、染織作家として社会で生きていく術となります。
SDGsが騒がれる昨今、生活に必要とされるテキスタイルを生み出す私たちに何ができるでしょうか。責任を持ったモノづくりとは何か、産業と技術革新に対するアプローチはないか、テキスタイルとデザインの力で一緒に考え実現してみませんか?
東北の地が培ってきた力は、素材に寄り添いながら生活を彩るテキスタイルを生み出す姿勢です。限りある素材や資源を考え、新たなテキスタイルを生み出すことは、これからの暮らしと時代を支えるモノで在り続けるでしょう。